HOME > 悩みの原因と対処方法 > ヒールヒットの矯正
これまで見てきたように、ゴルフでスライスする原因は、フェースが開いている(振り遅れなど)、アウトサイドイン軌道、という二つが主流です。しかし初心者には、もう一つの原因がスライスを誘発しているケースも多いです。それはクラブの手元に近いヒール側で当たってスライスしている事です。
ドライバーやウッド系のクラブ・ユーティリティは、実はクラブフェースの両端は少し曲がっています(いわゆる「バルジ」)。そしてヒール側に当たるとスライス回転が、先っぽ(トゥ側)で当たればフック回転が掛かります。直感的には回転が逆な気がしますが、クラブヘッドとの摩擦で「ギア効果」が発生するので、ヒール側だとスライス回転となります。
※少し見えにくいですが、フェース部分も端は角が丸くなっている。
ドライバーでヒールヒットすると、フェースの向きより左に飛び出し、スライスして戻ってくる球筋になります。そして球はあまり上がらず、低い弾道はとなります。無論、スイートスポットを大きく外れているので打感が非常に悪く、かなりの初心者でも「芯を外して当たった!」と分かるかもしれません。勿論、飛距離もかなり落ちます。
他の二つ・・・フェースが開く or アウトサイドイン軌道の場合、必ず高い弾道のスライスになりますから、ヒールヒットでスライスする場合との見分けは簡単です。また、アイアンでシャンクがよく出る人は、ドライバーやフェアウェイウッドでもヒール側で打っている可能性大です。
ヒールヒットが出る理由は、遠心力で腕がボール方向に引っ張られ、アドレス時よりも前にクラブが下りてくる事が主な原因です。またシャンクが出る原因と治す方法で書いたように、ボールを打ちに行く人〜身体が突っ込む癖のある人も、やはりヒールヒットしやすいです。
中でも最も大きな影響は、遠心力によって手元が引っ張られる事です。遠心力はゴルフスイングにおいて、飛距離を生む最大の動力源でありますが、同時に正確にアドレスの場所にクラブヘッドを戻す事が難しくなる、最大の元凶でもあるのです。
以下の写真は、宮里藍プロのスイング連続写真です。インパクトの瞬間、アドレス時に作った手首の角度が伸びて、手元も浮いていることが分かります。
無論ですが、藍ちゃんが下手だからではなく、プロゴルファーでも全員が手首の角度は伸びて、アドレスとインパクトは必ずズレています。唯一の例外は、そもそも手首を伸ばしてアドレスする一部のプロゴルファー(モー・ノーマンやブライソン・デシャンボーなど)だけで、後の人は程度の差こそあれど、例外なくアドレスとインパクトの手元の位置はズレています。
「小娘たちに飛距離で負けないための授業(八木一正・著)」によると、ヘッドスピード40m/sのアマチュアでも、スイング時に掛かる遠心力は130G(重力の130倍)もあるそうです。300グラム程度の一般的なドライバーでも、インパクト直前には39kgもの力で引っ張られる計算なので、手首が伸びてしまう事は避けようが無いのです。
それでも、なるべく伸びないよう我慢する事も必要です(一般的には「コックを長く保つ」と表現される動き)。同時に、手元以外の身体の動きでも、ボールとの距離を調整する必要があるのです。宮里藍プロは、手首は伸びて手元が浮くことを、ボディーターンで左肩が引き上げたり、頭は逆に沈み込ませる事などで調整して、ヘッドを正確にボールに当てています。
ヒールヒットが多発するアマチュアゴルファーは、まず身体が前に突っ込まない事が先決です。そしてボール方向にクラブを下ろさず、身体の右側へ振り下ろすのです。つまり、アウトサイドイン軌道の矯正と同じで、脇を締めて右側でクラブを振り下ろし、インサイドからボールを捉える感覚が必要です。
多くのアマチュアは、ボールを打ちたい気持ちが強すぎて、切り返しと同時に身体を最速で回転させようとするため、アウトサイドイン軌道になるのです。そして、クラブが下りきる前に遠心力が掛かるので、手元が浮きやすく、ヒールヒットも多発するのです。
ヒール側に当たる事の矯正まとめ
・ドライバー(ウッド系クラブ)はヒール側で当たるとスライスする
・ヒールヒットは左に出て右に曲がる、低いスライス弾道になる
・手元が浮いたり、身体が突っ込む癖などが原因
・解消方法は基本的に「アウトサイドイン」の改善と同じ
要するに、アウトサイドイン軌道を治す練習をしていれば、自然とヒールヒットも起こらなくなってきます。そしてシャンクの改善と同様に、ヒールに当たりたくないからアドレスでボールから離れて振ろうとすると、かえってボール方向へ突っ込みやすくなるので注意です。練習場では、むしろいつもより球に近くアドレスをするドリルも、ヒールヒット改善に有効です。