HOME > ゴルフの物理学 > ドライバーのフェースに丸みがある理由
ドライバーなどウッド類は、丸い洋梨状の物体を切断してフェース面を作った形状をしています。ウッドはその名の通り、古来は木の根っこ(パーシモン=柿の木の根)を素材としていたからですが、メタルやカーボンやマレージング等々へと素材が変わってきても、その形状が物理的に優秀なので引き継がれているのです。
意外に思うかも知れませんが、実はウッド類のフェース面は、真っ平らにはなっていません。先側(トゥ)や手元側(ネック)が、丸く面取りされたようにカーブしています。このフェースの端の丸みはバルジと呼ばれます。テーラーメイドだろうがミズノだろうが、どのメーカーのドライバーも(程度の差はあるが)必ずこのバルジという丸みが付けられています。
※ウッド類は端が面取りされたように丸みが付いている
ウッドのフェース面にバルジが付けられる理由は、そうした方がミスヒットした時に方向性が損なわれにくいからです。バルジは「ミスショットのお助け機能」だと言い換えるられます。
詳しくは下記の動画が分かりやすいですが、バルジがあると物理用語で言うところのギア効果が発生します。クラブのトゥ側でボールを打つと、本来なら衝撃でフェースが開くのですが、バルジが付いていると同時にギア効果が発生して、フック回転がかかるのです。そのため、球は狙いよりも右方向へ飛び出しますが、フック回転の影響で球が曲がって戻ってくるため、結果的には概ね真っ直ぐの方向へ飛ばせるという仕組みです。
ヒール側で打った時はその逆で、フェースはボールと衝突する衝撃で「被る(閉じる)」方向へ向きますが、バルジのギア効果で右回転が掛かるので、狙いよりも左に出て戻ってくるスライスが発生するのです。
つまりドライバーなどウッド類のクラブは、フェースの真ん中(芯)から前後にズレて当たっても、ミスをある程度帳消しにする効果を備えているのです。バルジの丸みは、ドライバーが最も大きく、スプーン(3W)やクリーク(5W)とクラブが短くなるほど小さいです。
バルジというこの丸みは、ドライバーやフェアウェイウッドは無論、ユーティリティーにも付いていますが、アイアンには存在しません。バルジが無いアイアンでは、トゥ側に当たればフェースが開いて右に飛ぶだけで、フック回転はしてくれないのです。
※バルジが効果を発揮するには、ヘッドに奥行き(重心距離が長い)が必要です。アイアンはヘッドが薄い板のようで奥行きがないので、バルジを付けてもサイドスピンが掛からないのです。
ただしこのバルジ、ミスヒットを完全に帳消しするだけの効果はありません。上記の動画でもあるように、アマチュアゴルファーに多いのは、トゥ側ではなくヒール側へのミスヒットです。ドライバーをヒールヒットすれば、左に飛び出してスライスして戻ってくるので、確かにOBにはならないでしょう。しかし、飛距離が大幅に落ちるというデメリットもあるのです。
★関連ページ;スライス解消の方法 【その4】 〜ヒール側に当たる事の矯正
プロゴルファーの中には、ドライバーはフェースの真ん中・真芯で捉えるのではなく「フェース面のトゥ側の少し上側の打点が最も飛ぶ!」と力説する人も居ます。ここで打てば、物理的には縦のギア効果も使えるので、バックスピン量が減ってランが増える=飛距離の出るドローボールが打てる・・・という理屈です。
しかしこの「トゥの上側でドローを打つ」という打法、技術的には真芯で打つよりも遙かに難しい芸当です。一歩間違うと、フェースが右を向きすぎたプッシュアウト、逆にチーピンのような酷いフックも出るリスクもあり、アマチュアゴルファーが参考にする技術ではありません。ドライバーは大きなフェース面で、できるだけ芯の部分を広げようという技術革新が続けられています。アマチュアゴルファーは「トゥ寄りの上側で」なんて難しい事を考えず、素直にフェースの真ん中で捉える練習をすべきですよ。