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イ・ボミ選手は韓国出身の女子プロゴルファーで、2015・16年と連続で日本ツアーの賞金女王になりました。常に笑顔を絶やさずファンへの対応も良いことから、昨今の嫌韓ブーム(?)にも負けず、日本で圧倒的な人気を得ていることは、ご存知の通りです。
そんなイ・ボミ選手のスイングは、我々アマチュアゴルファーが参考にするには最適なお手本だと言えます。身長158センチと日本の一般女性の平均と同じで、ヘッドスピードも42〜3m/s程度ですから、フィジカル的にも無理なくアマチュアが真似できる存在です。まずはイ・ボミ選手のスイング動画を見て下さい。
イ・ボミのスイングは、一言でいうと「特徴が無い事」が特長です。どんなプロゴルファーでも、個性的・常識を逸脱した動きが何処か少しくらいはあるものですが、イ・ボミ選手にはとにかく「癖」と呼べるものが全く見当たらない、シンプルで美しいスイングです。
分類上は、韓国女子プロに多い「インパクトでベタ足・腰が開かない・頭が右に残る」というタイプのスイングです。しかし同じ韓国の女子プロでも、アン・ソンジュやキム・ハヌルなどは、右足がインパクトまで完全にベタ足(かかとが浮かない)で、腰もほとんど開かないですが、イ・ボミ選手はそこまで極端ではありません。インパクトで少し右足かかとが浮きますし、腰も若干開きます。
悪く言えば韓国系スイングが徹底できていない訳ですが、逆に言うとよりナチュラルで体に無理のない、再現性の高いスイングと言えます。やってみれば分かりますが「ベタ足・腰を開かない・頭を右に残す」という動きは、スイングで発生させる自然な身体の動きと反対なので、かなり難しいです。アマチュアゴルファーが見よう見まねで行えば、単なる手打ちになり、ヘッドスピードが上がらない上に引っかけてばかり・・・となりがちです。
「身体の開きを抑えて右サイドで振る」韓国女子プロ系譜のスイングは、現代では主流となりつつありますが、「腰を切る」や「ボディーターン」という意識でゴルフを覚えた日本人には、完全にマスターするには時間が掛かります。しかしイ・ボミ選手のように、多少はかかとが浮いたり腰が開いたりしても良い・・・というスイングなら、真似しやすいはずです。
また上記動画で、M-tracerが4.1度のインサイドアタック・3度のアッパーブローと数値が出ていますが、これもドローボールヒッターとして実にナチュラルで無理の無い数値です。完全にシャットフェースのまま振るのではなく、適度なフェースローテーションが入って、ややインサイドから球を捉まえているのです。
あえてイ・ボミ選手の特徴的なポイントを挙げるとすれば、トップがコンパクトな事くらいでしょう。上記のスロースイング動画で見れば一目瞭然ですが、トップの位置でもシャフトが平行にならず、10〜20度くらい手前までしかテイクバックしていません。
しかしこれは、捻転不足でトップが浅くなっている訳ではありません。左肩が右足の上にまで回り込んできているので、上半身は十分な捻転が行われています。トップがコンパクトな理由は、手首の縦のコックをあまり使わないからです。
実は手首というのは、横のコック(ヒンジ)の使い方が重要で、縦のコックを使わないでもあまり飛距離には影響しません。ドラコン選手のように「方向性無視・究極のヘッドスピードを目指す」ならいざ知らず、スコアメイクを考えるなら、縦コックを抑えたスイングは有効です。イ・ボミ選手も、完全ノーコック打法の笠りつ子選手も、女子プロの中では平均以上の飛距離を出せて活躍していることが、それを証明しています。縦のコックを適度に抑制すれば、トップがコンパクトになって、ミート率や方向性が明らかに良くなります。
上記は宮里藍プロのスロー動画です。一般的には藍ちゃんは、理想的で美しいスイングだという評判が多いですが、実はわりと癖が強いスイングです。宮里藍プロはトップでフェースが真上を向くほどの極端なシャットフェースですし、トップで右上腕が平行よりも上がり右脇が大きく空く「フライングエルボー」なトップです。
宮里藍と比較すれば、イ・ボミのトップはシャットフェースすぎない適度なアングルですし、右上腕が地面と平行までなので、フライングエルボーというほどにはなっていません。やはりイ・ボミ選手は、何から何まで「ほどほどな範囲」で留まった、クセの無いスイングですね。アマチュアゴルファーが無理なく真似できる、理想的なスイングだと言えます。
イ・ボミ選手のスイングまとめ
・極端な動き(癖)が何もない事が特長
・ドローヒッターだが、シャットフェースでも極端なアッパーでもない
・トップはコンパクトだが、捻転は十分に行われている
余談ですが、上記動画でM-tracerの数値が『ヘッドスピード45.2・推定飛距離230ヤード』と出てますが、これではミート率が1.3程度しかない計算になるので、誤動作と思われます。そもそもイ・ボミ選手はもう少し飛距離が出ますが、一方で他メディアでのヘッドスピード計測を平均すれば42〜3m/s程度でしたから。M-tracerはクラブへの装着加減によって、ヘッドスピードの数値がブレやすいので、利用の際は注意すべきです。