HOME > 有名レッスンプロの内容と評判 > ベン・ホーガンは時代遅れ?
ベン・ホーガンは1950年前後に活躍、4大大会に全て優勝(計9勝)した、ゴルフの歴史に残る名プレイヤーです。彼の著書「モダンゴルフ」は、日本語にも訳されて大ヒットし、20世紀後半の日本ではゴルフのバイブル的な書物として評判となり、熱心な信者達を生みました。
陳清波プロをはじめ、日本でもベン・ホーガンのスイングを必至で真似して成功を収めたプロゴルファーが多かった事も、ホーガン信仰が凄まじかった理由です。上記のアマゾンの書籍レビューでも、ちょっと気持ち悪い位に高評価ばかりが揃っており、この古典の熱狂的信者が未だに多い事が伺えます。
しかし当サイトでは、ベン・ホーガンが説いたゴルフ理論の内容は、様々な変化を遂げた現代のゴルフには合わなくなっていると考えます。ホーガン流のスイングが染みついているベテランゴルファーはともかくとして、これからゴルフを始める初心者の人は、絶対にモダンゴルフを参考にしてはいけない!と断言しておきます。
まず、モダンゴルフの内容でも特に中心となる要素は・・・
モダンゴルフで特徴的な内容
・スクエアグリップで握る
・腕を回旋させる(アームローテーションを激しく使う)
・腰をバンプさせる
という3つが挙げられます。これらは全て、ベン・ホーガンが実戦したスイングであり、交通事故による故障にも負けずツアー通算69勝を挙げた原動力といえます。従って当時のゴルフ事情と、ホーガン自身の身体能力とは合致していた動きだったのでしょう。つまり「当時の」「ホーガンにとって」ベストなスイングだった事は確かで、その事実を否定するつもりはありません。
しかしホーガンが活躍したのは、60年以上も前の話です。この間にゴルフは大きく進化(変化)しました。クラブは軽く&長くなり、ドライバーのヘッドは2倍以上の大きさになりました。このため、現在ではモダンゴルフの理論は物理的にマッチしなくなったのです。
当時より現在の方が飛距離を得やすくなりましたが、クラブの操作性は著しく低下しました。物理的にいうと、長尺と大型ヘッド化により「慣性モーメント」が大きくなり、フェースの開閉が困難になったのです。早い話が、バックスイングでフェースが開くと、インパクトまでに閉じる事が難しくなったのです。初心者ゴルファーがスライスしか打てないのは、この事が大きな原因です。
このような現代のクラブで、ホーガンの提唱したように過度なアームローテーション(バックスイングで腕を時計回りに捻り、ダウンで捻り戻す)を行えば、フェースが閉じきらずにインパクトを迎えるリスクが高まり、スライスが激増するのです!
※モダンゴルフでの左手のローテーション
同様に、モダンゴルフで推奨される「スクエアグリップ」は、フェースが開いてインパクトしやすく、アマチュアには評判の悪い握り方です。やはりこれも、ただでさえ開きやすい現代のゴルフクラブでは、スライスを誘発しやすいグリップなので初心者には危険です。
ちなみにベン・ホーガンがスクエアグリップでアームローテーションを過剰に使った事には、隠された理由がありました。ホーガン自身も最初はフックグリップで握っていたが、チーピン癖が酷かったので、それを矯正する為にスクエアに握るよう変えたのです。
そして最も重要なのは、ベン・ホーガンは(右打ちゴルファーですが)左利きだったという事実です。つまり元から左手のパワーが強いので、モダンゴルフで語られるように左手首を大きく外旋させる(テニスのバックハンドでトップスピンを掛けるような動き)事が出来たのです。右利きの人は、そもそも左手首を外旋させる動きは不慣れなので、フェースを閉じる事が難しいです。左利きが考えた理論という点だけでも、アマチュアがモダンゴルフをそのまま信仰しては行けない事が分かりますね。
長尺と大型ヘッド化が進んだ現在では、フェースの開閉を極力行わない打ち方が適しており、アームローテーションを使わないスイングが主流です。プロゴルファーでも、宮里藍やダスティン・ジョンソンのような極端なシャットフェースのスイングが増えており、ベン・ホーガンのように腕を過剰に捻るスイングをする人は少数派になってきています。
現代でも一部には(セルヒオ・ガルシアやリッキー・ファウラーなど)アームローテーションを大きく使うスイングで活躍するトッププロは居ますが、彼らは正確なインパクトを再現できるよう、猛練習でスイングを固めてきた人達です。練習量の限られるアマチュアゴルファーが、真似すべきスイングとはいえないでしょう。
例えば、モダンゴルフと共に20世紀後半のゴルフ理論で一大ムーブメントを巻き起こした名コーチ=デビッド・レッドベターは、最新の著書・Aスウィングでアームローテーションを行うべきではない、と教えています。現代のゴルフでは、アームローテーションは不要だという評価が圧倒的になってきています。
ホーガンスイングの内容で特徴的な、もう一つ=バンプ(ダウンスイング初期に腰を大きくスライドさせる動き)も、アマチュアゴルファーにはお勧めできません。バンプはスウェーと紙一重の動きなので、一歩間違えるとシャフトが順しなりしてフェースがガバ開き⇒プッシュアウトスライスを誘発します。バンプによる体重移動は、グラブヘッドがインパクトゾーンに来るまでには終わっている必要があるのです。
★関連ページ;体重移動とスウェーの違い
しかもバンプは、スイングの土台である下半身を大きく動かす事になるので、動きを完璧に習得〜再現できなければインパクトが大きくずれやすく、シャンクやダフリ等の酷いミスを誘発します。バンプスイングも、マスターすれば良い球が打てるのは確かなのですが、やはり練習量が少ないアマチュアゴルファーには、再現性を妨げる悪害要素と言えます。近年の主流は、イ・ボミのように能動的な体重移動を行わず、体幹の回転だけで打つスイングです。
確かにベン・ホーガンがモダンゴルフで語る方法でスイングすれば、レイドオフの美しいトップが作れ、スイングプレーンも綺麗に描けます。ダウンでクラブが寝て下りてくるので、正面から見れば非常にタメの効いたスイングにも見えます。ホーガン流のスイングで成功しているプロも居るので、当サイト管理人もモダンゴルフの内容を全面否定するつもりはありません。ですが、現代のクラブ事情には物理的に適さない事も、また練習量が少ないアマチュアゴルファーがマスターするのが難しい事も、疑いようのない事実です。
ゴルフレッスンには実に様々な教えがあり、全く相反する内容を説く教えもあります。良いショットを打つための方法論は千差万別で、人によって向き不向きもあるので、その評判は正しいのか?断言は出来ません。ですが、我々アマチュアゴルファーにとっては、出来るだけ余計な動きをしない、シンプルで再現性の高いスイングが最重要だと思います。