HOME > ゴルフに関するデータと用語集 > アコーディア上場廃止の影響
既にご存知の人も多いでしょうが、ゴルフ場運営会社のアコーディアが株式の上場廃止に至ることが決まりました。2016年11月末に、投資ファンド・MBKパートナーズがアコーディア株をTOB(株式公開買付)により買収することにより、非公開企業になるためです。
アコーディアは全国に136のゴルフコース(2016年3月時点)を保有し、PGMと並ぶ日本の二大ゴルフ場チェーンとして有名です。アコーディアのコースは全般的にプレー料金がリーズナブルなうえに、株主優待券で更に安くプレーできるということで、ゴルフ好きの投資家に人気でした。しかし上場廃止により、2016年9月末分が最後の優待券となり、以後は無くなります。
このアコーディアグループの上場廃止が、ゴルフ業界にどのような影響を与えるのかを考察してみます。まず言えることは、上場廃止になってもアコーディアグループの現在のゴルフ場運営はそのまま続けられます。しかしゴルフ場のサービスの質が低下する懸念があります。
影響その1;アコーディア系列のゴルフ場でサービスが低下する?
アコーディアを買収するMBKパートナーズは、俗に「バイアウトファンド」と呼ばれる投資組合で、分かりやすく言えばハゲタカファンドです。MBKパートナーズは韓国や中国を中心に、特定の会社の株を買収し、収益性を高めた後に第三者に高値で売り付け、利ざやを稼ぐというやり口です。
バイアウトファンドは、金儲け主義の極地にあるような存在です。当然、買収されたアコーディアの各ゴルフ場に対しては、利益率をもっと上げるよう厳しいノルマが課せられると予想されます。ですが日本のゴルフ人口は減少しており、客数を増やして増益することは難しい情勢です。そんな中で利益を増やすためには、プレー料金の値上げをするか、経費削減を徹底するしか選択肢はありません。
アコーディア系列のゴルフ場は、ただでさえ「グリーンがピッチマークだらけで汚い」とか「売店が自販機で不便だ」「土日は客を詰め込みすぎ!」などと、料金の安さ以外には不評のクチコミが多いです。そのうえ経費削減の命令が下れば、更なるサービス低下〜例えば「最寄り駅との送迎バス廃止」「風呂の営業時間の短縮」など、悪影響が心配されます。
影響その2;ライバル=PGMの株主優待が改悪される?
アコーディアが上場廃止になったことで、ライバルであるPGM(平和グループ傘下)の株主優待が改悪される可能性も考えられます。アコーディアとPGM、同程度の規模を持つ上場企業が二社あって競い合っていたからこそ、プレー料金が割引になる株主優待券が存在した訳です。アコーディアが上場廃止になったことで、ライバルと比較されないので、PGMが株主優待を廃止や縮小しても、客離れが起きにくい訳です。
但し、すぐにPGMが株主優待制度を廃止する可能性は、それほど高くないでしょう。プレーしたことのある人なら分かると思いますが、PGMとアコーディアではゴルフ場の質は大差ないにも関わらず、PGMの方が料金が高いコースが多いです。PGMの株主優待券(親会社の平和【証券コード6412】:3500円割引)は一度に複数枚の利用が可能で、街中のチケットショップやヤフオクでも多数が転売されています(平均2千円程度)。そのためPGMではプレー料金が優待券利用を前提とした水準になっています。よって、いきなり優待券を廃止すれば、PGMのゴルフコースが単に割高なだけとなり、客離れが起きかねません。
ゆえに2017年以降、PGM系列のゴルフ場の料金改定(安くなる)が徐々に進めば、PGMが株主優待制度の廃止を目論んでいるサインだといえそうです。優待が廃止されれば株価が暴落する可能性が高いので、PGMの株主の人は注意が必要ですね。
影響その3;日本のゴルフ場のプレー料金が全体的に値上がりする?
影響その1でも少し述べましたが、新親会社となるMBKパートナーズは営利追求してくることは間違いないので、そもそもゴルフ場のプレー料金を現在よりも値上げしてくる事も考えられます。特に、日本で数少ない人口増加・好況に沸く東京周辺のゴルフ場は、少々高くても客は来るので、値上げされる可能性は十分あるでしょう。
そしてアコーディアが値上げすれば、ライバル=PGMも同様に値上げ(あるいは「その2」で挙げた優待廃止)を追随するでしょう。日本で全国チェーン展開するゴルフ場はこの二社だけなので、競争原理は働きません。携帯電話三社(ドコモ・KDDI・ソフトバンク)が料金横並びのカルテル状態を保てたのも、他にライバルが居ないので競争が起きないためです。
本来なら、最低でもこの2社に対抗できるような第三のゴルフ場グループが形成され、サービスを競争してくれるのがゴルファーにとって理想ですが、現実には逆のことが起きつつあるのです。
というのも、元々PGMは2012年11月に、アコーディアの敵対的買収を目論んだ経歴があります。その時は金の臭いを嗅ぎつけた、投資ファンド「レノ」(ライブドア事件の村上ファンド=村上世彰氏の新会社)が株式の買い占めに入った事などで頓挫しました。ですが今でもPGMはアコーディアの買収を狙っていて、今回の上場廃止の裏にはPGMグループも絡んでいる・・・などとネットではきな臭いクチコミも多々あります。
近年の日本のゴルフ場業界は『アコーディア・PGMの2大勢力と「その他単独のゴルフ場達」』という構図でした。これがもしPGMの一社独占になってしまえば、競争原理の全く働かない中で、料金値上げにも関わらず質は低下、というろくでもない未来(※注)になりかねません。
※注;この典型例が、独占企業(マイクロソフト)が欠陥製品(ウインドウズ)をそのまま堂々と売り続けているパソコン業界です。
影響その4;ゴルフ会員権相場には関係しない
アコーディア・PGMは共にゴルフ場を買収し、グループ会社化してきました。その一角が崩れることで、ゴルフ会員権の相場は今後どうなるのでしょうか? 実は会員権相場への直接の影響はあまり無いと予測されます。
前述したように、上場廃止となってもアコーディアグループのゴルフ場は、今後も非会員のビジター客を呼び込むビジネスモデルを続けていきます。よって近年確立されている「ビジター客としてネットで予約してプレーする」という一般ゴルファーのスタンスには影響は無いです。
何よりアコーディアの動向に関係なく、今後はゴルフ会員権を維持できるのは、一部の名門コース(会員権が高額な日本のゴルフコースランキングに出るような所)と、東京近郊の交通の便がよいコース、この二つだけでしょう。それ以外のゴルフ場には、会員権が値上がりする要素は全くと言っていいほど見当たりません。