HOME > ゴルフの物理学 > ドライバーの球が上がりすぎる原因
アマチュアゴルファーのドライバーショットは、左右に曲がるミス(特に右プッシュ)が非常に多いですが、同時に「球が高く上がりすぎて全然飛ばない」という悩みを抱える人も多いです。俗に言う『球が吹け上がる』状態ですね。
ゴルフのドライバーショットは、打ち出し角度やスピン量が、適切な範囲で納まっていることがベストです。弾道は高すぎても、逆に低すぎても、物理的な最大飛距離は得られません。しかしアマチュアゴルファーは、球が吹け上がりすぎて飛ばないケースが非常に多く、低すぎて(球がドロップする)飛ばないというケースは少ないです。平均スコア100前後のアベレージゴルファーは、大半の人が球が上がりすぎて飛距離をロスしている状態です。
そして、球が吹け上がる人に対するアドバイスとして、間違った情報が蔓延している事が、問題を厄介にしています。その典型が「ティーの高さを低くしろ」です。球が上がりすぎる原因は大きく3つありますが、実はティーを低くすることは逆効果な事もあるので、注意が必要です。
★「球が上がりすぎ ⇒ティーを低くしろ」は間違い!
ドライバーの球が高く上がりすぎる原因には、インパクトでフェースが開いているケース、すくい打ち(過度のアッパーブロー)になっているケース、上から打ち込みすぎて(過度のダウンブロー)スピン量過多で吹け上がっているケース、の3通りがあります。
ドライバーの球が上がりすぎる3大原因
・インパクトでフェースが開いている
・すくい打ち(過度のアッパーブロー)
・上から打ち込みすぎ(過度のダウンブロー)
まずフェースが開いて当たっていれば、当然球は通常よりも高く上がります。同時にスライスも併発するので、物理的に全く飛びません。この場合は、スライス癖を治すという根本的な対策も必要なので、そちらも併せてご覧下さい。
★関連ページ;スライス解消の方法 【その2】 右プッシュを防ぐ
二つ目の「すくい打ち」とは、スイングがボールの下から上へ持ち上げるような軌道になっている事を指します。野球のアッパースイングと同じで、いわゆる「しゃくり上げている」状態ですね。アイアンだと壮絶にダフるスイングですが、ドライバーはティーアップしているので、下から上へとすくい上げることが出来てしまうのです。
ドライバーは軽いアッパーブロー軌道(2〜4度程度)で打つのが理想なのですが、過度に下からすくい上げると、当然ながら高く上がりすぎて飛ばない訳です。
すくい打ちが原因の人は、巷の口コミで溢れている「ティーを低くする」とか「スタンスの中央寄りにボールを置く」事で、簡単に改善できる事もあります。
問題なのは3つ目のケースです。ドライバーショットが難しいのは、上記の「すくい打ち」と真逆の打ち方をしても、実は球が上がりすぎて飛ばなくなることです。アイアンのように上から打ち込む「ダウンブロー」の意識(※注)でドライバーを打つと、バックスピン量が過剰になって球が吹け上がるのです。
このような、過度なダウンブロー軌道で球が上がりすぎている人に対して「ティーを低くしろ」とか「ボールをスタンスの中央寄りにしろ」なんてアドバイスをすると、むしろ上から振り下ろす角度がキツくなって、更に球が吹け上がる・・・という悪循環に陥ります。
※注;厳密にはアイアンのダウンブローも、ほぼレベルに払い打つ軌道が正しく、多くのアマチュアが思い込んでいる「上から打ち込む」スイングではありません。
平均的な男性アマチュアゴルファー(ヘッドスピード40m/s)なら、ドライバーの適切なバックスピン量は概ね「2000〜2500回転/分」程度です。しかし、ダウンブロー軌道でボールを打てば、バックスピン量は簡単に「4000回転/分」以上にまで跳ね上がります。
これほどバックスピン量が増えると、球が吹け上がって勢いを失いますし、落ちてから転がる「ラン」も大幅に減るので、飛距離ロスは相当大きくなります。理論上、ヘッドスピード40m/sなら最大240ヤード、平均でも210〜220ヤード位は飛ばせるはずなのですが、バックスピン量過多で吹け上がると、200ヤード未満しか飛ばない事が多発します。
ですから、ドライバーの弾道が高すぎて飛ばない人は、まず自分のスイングが「すくい打ち」になっているのか?それとも「過度なダウンブロー」になっているのか?見極める必要があります。この両者は、同じ悩みにも関わらず原因が真逆なので、対処法も正反対になるからです。
トラックマンやスカイトラックなどの高度な弾道解析機だと、ボールへのアタックアングルも分かります。屋内の「鳥かご」で球を打つレッスンスタジオなら、大抵が何らかの弾道解析機を導入しているはずなので、見てもらえば簡単に判別できます。
ある程度スイングが固まっている人なら、自力でどちらのタイプなのかを見分けることも可能です。いつもよりボール2個分くらい左足側に来るようにアドレスして『いつもの位置にボールがある』意識でドライバーを振ってみるのです。更に球が高く上がったなら「すくい打ち」タイプですが、むしろ弾道が低くなったのなら「過度のダウンブロー」タイプです。要するに、自分がスイングの円軌道のどの辺りで、ボールを捉えているのかを見分ければ良いのです。
そして過度のダウンブロータイプの人は、上から打ち込む軌道を矯正するために、ティーを高くする方がむしろ有効です。高いティーアップで、ボール2〜3個分(10cmくらい)手前がスイングの最下点になる意識で振れば、適度なアッパーブローでボールに当たる(バックスピン量も増えない)ので、適切な弾道に納まりやすくなります。
実際の球より2個分ほど後ろに『仮想ボール』がある事をイメージして、それを打つ意識で振るのです。初心者の人だと「仮想ボールを想像できない」と嘆く人も多いですが、そんな時は仮想ボールの位置に、何か邪魔にならない軽いもの(糸くずとか)を置けば、イメージが沸きやすいでしょう。
コースでは目印を置くのはルール違反ですので、練習場で仮想ボールをイメージするトレーニングを行っておく必要があります。実際の球と違う位置にボールをイメージすることも、慣れればさほど難しくない技術です。
ドライバーの球が上がりすぎる原因まとめ
・すくい打ち、過度のダウンブロー、と真逆の原因がある
・過度のダウンブローなら、ティーを低くするのはむしろダメ!
・身体が左へ突っ込む(スウェー)も、拭け上がりを助長する
もう一つ大きな注意点として、ダウンスイングで左足側へ身体が突っ込む人〜いわゆるスウェーが出ると、打点が右足側へずれる訳なので、必然的にダウンブロー軌道になってしまいます。左へ突っ込む事は、ドライバーの吹け上がり以外にも、様々なエラーの原因となるので、ゴルフスイングで絶対に矯正すべき悪癖です。