ゴルフは屋外で行うスポーツゆえ、天候に左右される面があります。特に風の影響は極めて大きく、強風は確実にスコアを悪化させます。海岸沿いの「リンクスコース」で行われる全英オープンなど、風の影響が強いコースでは、プロでも誰もアンダーパーが出せない日もあります。
ではゴルフで風の影響を正確に割り出す事は可能なのでしょうか?様々な人が物理的に検証したデータもあるので、一通りまとめてみます。
まず「ゴルフは科学でうまくなる(ライフ・エキスパート)」という書籍によると、風速が秒速5メートルの時にヘッドスピード40m/sでドライバーを打った際・・・
・向かい風では17ヤード飛距離が落ちる
・追い風では12ヤード飛距離が伸びる
と計算されています。アゲンストの方がフォローより影響が強い結果が出ていますが、決して誤植ではなく物理的にそうなるのです。ゴルフボールがバックスピン回転で揚力を得て飛ぶので、向かい風なら揚力が増加し、球が吹け上がって風の抵抗が大きくなりやすいです。一方で追い風だと、風に押されてバックスピンがほどけ、球がドロップしやすい(キャリーが伸びない)ため、思ったほど飛距離が伸びないのです。
ちなみに風速5m/sというのは、冬場なら平均的、夏場なら「今日はちょっと風が強いな」と感じる程度の強さです。東京都の年間平均風速がちょうど3m/sです。また家庭用扇風機を「強」にして1メートルの距離で測ると、風速4m/s程度なようです。
ビューフォート風力階級(一部抜粋) | ||
階級 | 風速(m/s) | 目安となる事象 |
0 | 0.3m/s以下 | 煙が真っ直ぐ登る。水面が全く波立たない |
1 | 0.3〜1.6 | 煙がなびくが、風見鳥は動かない |
2 | 1.6〜3.4 | 顔に風を感じる。木の葉が動く。風見鳥が動く |
3 | 3.4〜5.5 | 木の葉や小枝が絶えず動く |
4 | 5.5〜8.0 | 砂埃が立つ。水面に白波が多く立つ |
5 | 8.0〜10.8 | 灌木がゆれる。海面は白波がしぶきをあげる |
6 | 10.8〜13.9 | 大きな枝も揺れる。傘がさせない |
7 | 13.9〜17.1 | 樹木全体が揺れる。風に向かって歩きにくい |
なお、風速の目安として「ビューフォート風力階級」という世界的に有名な指標があります。上記のように風速1m/s未満は、ほぼ体感できません。ちなみに気象庁では、風速10~15m/sだと「やや強い風」、20m/s以上は「非常に強い風」等と、強さで用語を使い分けています。
次にアメリカの「Sport Science」という科学検証番組で行われたデータです。
上記の動画によると、一般的なゴルファーのヘッドスピードでは、時速40マイル(秒速17.9メートル)の追い風だと20ヤード飛距離が伸び、逆に時速40マイルの向かい風だと40ヤード飛ばなくなる・・・と分析されています。一体何のクラブで、どの程度のヘッドスピードで打ったのかは不明ですが、アマチュアゴルファーの平均くらいで・・・という意味でしょうから、前述のヘッドスピード40m/sと同じ位と思われ、アイアンではなくドライバーと考えて良いでしょう。
前述の「ゴルフは科学でうまくなる」のデータよりも、風の影響が小さいように思います。秒速18メートルといえば、全英オープンで風が強い日はこの位は吹いている事もありますが、追い風で20ヤードしか伸びないという事は無い気がします・・・。
また後半では「横風が時速10マイル(=秒速4メートル)の真横の風では、15ヤードずれる」と言っています。逆にこちらは少し過大な気がします。風速4メートルというのは、風車や風力発電プロペラがギリギリ回り出す位の強さで、冬場だとむしろ「今日は穏やかな方かな?」と思う位の強さです。真横からでも15ヤードは言い過ぎで、10ヤード強もずれるかどうか・・・というのが当サイト管理人の雑感です。
ということで、検証機関によって結構差が大きいようですが、当サイト管理人の体験を含め、風の影響の目安を強引にまとめると・・・
★風が秒速5メートル(夏ならかなり強い、冬なら平均的)の場合
・向かい風では15〜20ヤード飛ばない
・追い風では10ヤード強余計に飛ぶ
・横風だと10ヤード位は流される
★風が秒速10メートル以上(冬場で強風の日)の場合
・向かい風だと3クラブぐらい上げるべき
・追い風だとドロップしてキャリーが伸びないので、意外に飛ばない
という感じだと思います。従ってショートホールで5メートルの向かい風だと、1クラブ上げるだけでは不足でしょう。厄介なのが追い風の時で、アイアンショットではバックスピンがほどけて、落ちてからグリーンで止まりにくいので注意です。
最後に、滞空時間が長いほど風の影響が大きいので、強風の日は低い球で攻めるのが有効なコースマネジメントです。当サイトでも、アマチュア向きだと紹介しているパンチショットは、出球が低いので風の日には威力を発揮します。また普段から練習場で、グリーンにキャリーで落とすだけでなく、低い球で手前からツークッションぐらいバウンドさせて乗せる練習をしていれば、かなり役立ちます。
特に風の強い冬場のゴルフには、ゴロフ〜転がし中心のコースマネジメントを覚えておく事は有効です。初心者は、とかく美しいショットを目指す傾向が強いですが、上級者は意外に簡単でミスの少ないプレーでスコアをまとめているのですよ。