HOME > ゴルフの物理学 > ハイドローの打ち方と飛距離が出る理由
ゴルフではスライス(フェード)よりもフック(ドロー)の方が飛距離が出ることはよく知られています。ドライバーのハイドローは、女王イ・ボミをはじめ女子プロに多い球筋で「良く飛ぶけど打ち方が難しい球」として、アマチュアゴルファーの憧れの球筋ですよね。
しかし何故ドローボールが良く飛ぶのか?その物理的メカニズムを理解していない人は、プロゴルファーにも沢山います。彼らは子供の頃から何百万球とボールを打っていますが、あくまで大人の教え通りに理屈もわからず体で覚えているに過ぎないからです。だからアマチュアゴルファーが、プロの「ハイドローはこんな風に打つ」という感覚レッスンを学んでも、身に付かない事が多いです。
まずはドローボールが何故飛ぶのか?その物理的メカニズムを理解することが重要です。ゴルフで飛距離に関係するのは、サイドスピンではなくバックスピンです。そしてドローボールが飛ぶのは、フェードよりもバックスピン量が少ないことが、真の理由です。
※言うまでもなくサイドスピン〜ボールが右回転か左回転か?など飛距離に全く関係しません。右打ちのドローは飛びますが、左打ちのフェードは飛ばないですから、当たり前ですよね。
ゴルフではバックスピン量が増えると、球が吹きあがり、ボールが落ちてから転がる量が激減します。アイアンのようにグリーンで止める目的のショットはスピン量が増えてOKですが、ドライバーでバックスピン量が増えると、飛距離が大きくロスしてしまうのです。
ドローボールはフェードボールよりもバックスピン量が少ないから、落ちてからランが増えて、トータルの飛距離が増えるのです。そしてドローのバックスピン量が少ない理由は、アタックアングルの差が原因です。
★以下は、クラブフェース自体はスクエアにインパクトしているという前提です。フェースが開いてインパクトするスライスが飛ばないのは当然なので、ここでは触れません。
ゴルフでは、スライス系〜つまりアウトサイドインのスイングをすれば、必ずダウンブロー、つまり上から下へ振り下ろす軌道になるのです。逆にフック系〜インサイドアウトのスイングだと、必ずボールに対して低く払い打つ軌道になるのです。
これは人体の構造を考えれば理解できます。クラブや腕の長さがある分、インサイドアウト〜体に近いところからボールを打ちにいくには、右脇を締めて腕を体に近いところを通す必要があります。必然的に、クラブは低い位置からボールに向かわざるを得ません。
逆にアウトサイドインに振るには、腕を体から離すようにしないと、クラブヘッドがスイングプレーンの外側にいきません。必然的にクラブヘッドは高い位置からボールに向かいます。
同じロフト角でも、上からダウンブローに打てばバックスピン量が増えます(卓球のカット打ちやテニスのスライスショットと同じ)。逆に低い位置からボールに当たれば、ロフト角以上にバックスピン量は増えません。これがドローボールが飛ぶ原理です。
※もう一つ、アウトサイドインに振るためには身体の回転軸とクラブヘッドとの距離が離れるので、慣性モーメントが大きくなってヘッドスピードが下がる事も、スライス・フェードが飛ばない理由です。詳しくはゴルフスイングにおける遠心力の本当の意味をご覧下さい。
ハイドローの飛距離が優れているのは、高い弾道=キャリーが出るのに、バックスピン量が少ない=落ちてからよく転がる、という飛距離を伸ばす要素を良いとこ取りした球筋だからです。
そして実際のハイドローの打ち方は、脇を締めてインサイドアウトサイド軌道でフック回転を掛けつつ、若干のアッパーブローでボールを捉えることです。
もしフック系のボールが打てているのに、スライスした時と同じ程度しか飛ばない・・・という人は、バックスピン量が多いフックを打っている事が理由です。
具体的には、過度な「すくい打ち」になっている可能性大です。ドライバーはティーアップしているので、ボールの下からすくい上げるように打つことが出来てしまうのです。すくい上げるように振っていると、当然ながらフェースは上を向いてロフトが増えるのでバックスピン量も増えます。ゆえに、たとえインサイドアウト軌道でフック回転がかかっていても、球が吹け上がるうえにランが出ないのです。
アマチュアに多い、全然飛ばない「偽ドローボール」の原因の多くが、すくい上げるようにインパクトしているからです。
ゴルフ雑誌では「ドライバーはアッパーブローに捉えろ!」といったレッスンもよく見受けられます。確かに近年では、プロゴルファー・特に女子プロは若干のアッパー軌道のスイングでハイドローを打つ人が多いです。女王イ・ボミや宮里藍プロは、ドローヒッターとして有名です。
しかし彼女たちのアッパーブローというのは、本当に極わずか(2〜3度程度)の角度であり、極めて繊細な軌道です。毎日何百球と球を打つプロゴルファーだから出来る芸当であり、アマチュアの練習量では、この打ち方は球が吹け上がるだけで逆効果になりかねないので、注意が必要です。特に普段から(女子プロのように)インサイドから振る癖が着いてない人は、右プッシュアウトやチーピンなど、左右に大きくぶれやすくなるので要注意です。
ハイドローの打ち方と飛距離が出る理由まとめ
・ハイドローがよく飛ぶ理由は、バックスピン量が少ないから
・打ち方はインサイドアウトかつ若干のアッパー軌道で振る
・繊細な軌道なので練習量の少ないアマチュアが真似するのは難しい
ハイドローは下手なアマチュアが真似しても、過度にすくい上げるだけの「明治の大砲」になりかねません。本来低い弾道になるはずのインサイドアウトサイドのスイングで、ほんの僅かにアッパー軌道に振る・・・ハイドローは極めて難しい打ち方なのだと認識すべきです。