HOME > ゴルフの物理学 > 女子プロが男性より飛ぶ理由〜柔軟性
日本人の女子プロゴルファーの平均飛距離は、230〜240ヤード程度です。飛ばない人でも220ヤード位は行きますし、飛ばし屋(渡邉彩香や葭葉ルミら)だと260ヤード以上です。
一方で当サイトが検証したように、日本のアマチュアゴルファーの平均飛距離は、スコア90前後の中級者でも230ヤードあるかどうかで、100を切れない人だと200ヤード以下です。一般男性のほぼ全員が、女子プロよりも身体は大きく筋力も遙かに強いです。にも関わらず、彼女達の方が飛距離で勝る事には、明確な理由が幾つかあります。今回はその一つである「柔軟性」について説明します。
女子プロゴルファーと一般男性アマの決定的な違いが、柔軟性の高さです。特に、股関節と肩関節については、そもそも生物として物理的に異なるので、女性の方が柔らかくて当然なのです。
飛ばしの原動力が下半身である事は、多くのプロ達が口を揃える部分です。下半身を上手に使う技の一つが、ダウンスイングでの右足太股を左足にくっつけるように送る動きです。日本女子プロのレジェンド・岡本綾子プロが得意としていた動きで、古閑美保プロも「右足を蹴れ」と教えています。
しかしこの右足を内側に蹴り込む動きは、股関節の柔軟性が優れていないと出来ない動きです。動画にあるように、普通の男性がやろうとすると、股関節が硬いからつっかえて、右足かかとが早くめくれてしまうか、右膝が前に出てアウトサイドインの軌道になりやすいです。
古閑プロがいうように、男性と女性ではそもそも骨盤の形が異なり、また股関節(内転筋群)の柔軟性も全然違います。理由は明快で、女性は出産するため、そもそも股関節が柔軟にできているのです。大半の男性が「女の子座り」ができないのも、骨盤や股関節の構造が違うからです。
したがって、岡本綾子のような下半身で飛ばす動きは、一般男性には物理的に真似できないのです。この下半身の使い方は、女子プロだけが持てる「特権」だと言えます。
同様に、肩関節〜肩甲骨周りの柔軟性も、女性の方が圧倒的に男性よりも優れています。肩周りが柔らかいほど、深い捻転や、高いトップも作りやすいです。肩甲骨が極端に柔らかい場合、金田久美子プロのような、バックスイング中に一切フェースが開かないでトップまで振り上げる「スーパーシャットフェース打法」みたいな芸当も可能です。
※一般男性が金田久美子の真似をして、スイングプレーン上真っ直ぐなままバックスイングをすると、肩の高さにすら上げられません。当サイト管理人も、ハーフスイングが限界です(笑)。
また下記の動画のように、両手でクラブを持って背中側に回旋させる事も、ほとんどの男性は出来ませんし、南出仁寛プロも出来てませんよね。しかしドラコン女王=斎藤かおりプロは、楽々と前後に動かせています。
これも男女の違いが出る部分です。女性は肩周りの筋肉が極端に少ないので、肩甲骨を大きく稼働させられるのです。女性が遠投(ボール投げ)が極端に男性に劣るのは、肩の筋肉が男性より圧倒的に少ないことが理由です。
男性は、肩周りの筋肉(僧帽筋・菱形筋など)が太いので、ボールを遠くに投げる動作は得意ですが、筋肉が邪魔になって肩の可動域が狭くなっているのです。筋肉量と柔軟性は基本的に反比例します。中国雑技団のようなクネクネと柔軟な動きをするのは皆、細い女性達で、ボディビルダーのようなマッチョなのに柔らかい・・・なんて人は見たことないですよね。
しかし肩の可動域については、股関節の場合と違って、ある程度トレーニングで柔軟性を高めることは可能です。上記動画でも、ドラコン界でもトップクラスのマッチョ・和田正義プロが、楽々と肩を回すドリルをこなしています。筋肉が多いと可動域を邪魔しますが、一方で筋肉は「腱」や「骨」と違って柔軟性があるので、日々のストレッチで柔らかくすることもできるのです。
女子プロが一般男性より飛ぶ理由〜柔軟性まとめ
・女子プロは男性アマチュアゴルファーより柔軟性が優れている
・
岡本綾子のような太股の使い方は、股関節の構造上、男には難しい
・肩周りの柔軟性は、筋肉が多い男性でもある程度は改善できる
以上をまとめると、女子プロの飛距離の源泉である柔軟性ですが、男性アマチュアゴルファーには真似できない部分(太股の送り)と、トレーニングによってある程度近づける部分(肩の可動域)に別れると言うことです。股関節の柔軟性はどんなに頑張っても物理的に無理なことなので、努力するなら肩の柔軟性に絞るのが正解です。