プロゴルファーに「難しいショットは?」あるいは「嫌いなショットは?」とアンケートすると、必ず上位にランクインするのが『下りのパット』です。ゴルフ初心者でもある程度ラウンドした事がある人なら、下りのパターがやたら難しい事は体験しているはずです。
実は、下りのパットが難しい事には明確な理由があり、物理的にカップに入りにくいのです。下の図は、グリーンを断面から見た所です。いずれも右から左へパットするものだとします。
一番上の図のように、上りのパットでは、カップの手前側よりも向こう側が高いことになります。従って、カップの中心を通り過ぎる強さで打った場合でも、奥の縁に当たってカップの中へ落ちる可能性が高い訳です(真ん中の図)。
ところが下りのパットだと、これとは全く逆で、奥の方が低くなっています。従って下りだと勢いが強すぎるとカップを通り過ぎるか、あるいは奥の土手に当たっても角度的に外へ弾かれる可能性が高いのです(一番下)。
これはカップの真ん中を通った場合に限りません。ボールがカップの縁をクルンと回る、俗に言う「カップをなめる」場合でも同じで、上りの場合だと奥が高くて手前が低いので、カップの内側に落ちる可能性が高いです。しかし下りだと、カップをなめた球は、より低いカップの外側へと弾き出されやすいのです。
曲がるラインだと、更に厄介です。グリーンはスピードが速いほど曲がる幅も大きくなるので、カップインする為にはラインを大きく膨らませて厳密に狙う必要が生じます。マスダーズの行われるオーガスタナショナルGCが典型ですが、グリーンが高速になればなるほど、プロの人達でも大苦戦するのはこの事が理由です。
グリーン自体は高速でなくとも、下りのパットになると同じ原理で、やはり曲がる幅が大きく、狙いが精密でないと入らなくなります。つまり距離感の面からも、ライン読みの厳密さの面からも、二重の意味で下りのパットは難しいのです。プロゴルファーが嫌うのも当然な訳です。
しかしこの事を理解していれば、アマチュアでも戦略面でスコアを縮める事が可能になります。早い話が、下りのパットを残さないように攻めていけばよいのです。
プロゴルファーがグリーンを狙う場合、100ヤード以上残っている所からでも、基本的にピンの下側(上りのパットになる場所)を狙って打ちます。単純に真っ直ぐピンを狙うと、もし上側にそれて乗ってしまうとその後のパッティングが入りにくいからです。ですからプロの人達は、練習ラウンドで各ホールをチェックして、グリーンのどこへ狙っていくのか戦略を立てて試合に挑むのです。
アマチュアの場合、ロングショットでピンのどちら側に落とすかまで狙っても、その通りに打てる確率は低いです。しかしグリーン周りのアプローチショットなら、ピンの下側に狙って乗せる事は十分可能です。アプローチの距離からなら、たとえ知らないコースであってもグリーンの傾斜が分かるので、ピンの右か左か?手前か奥か?どちら側に狙うべきか目視で確認できます。
傾斜のきつさにもよりますが、下り1メートルのパットより上りの1.5メートルのパット方が入りやすいです。下手すると上りの2メートルの方が易しいかもしれません。こうして下りのパットを残さないように・・・という戦略で攻めていくだけでも、スコアが100前後の人なら軽く5打以上は縮まる可能性があります。