HOME > ゴルフの物理学 > パターはフェースを開閉すべきか?
パットというのは力加減してボールを転がすだけなので、極論すれば打ち方に正解などありません。プロゴルファーでも、クロスハンド(左手が下になる)でグリップする人や、パッティングの時だけグローブを外す人、ミシェル・ウィーのように直角な前傾姿勢で構えたり、サム・スニードのサイドサドルパッティングなど、奇抜なフォームの人も居ます。
※ミシェル・ウィーの変わったパッティングフォーム
だからこそゴルフ初心者は、パットをどのようにストロークするのが良いのか、迷うことが多いでしょう。特にパターのフェースを真っ直ぐ引くのか?それともショットのように開閉させるのか?で迷う人は多いです。
レッスン書や教えるプロによっても、パットで開閉させて打つか否かは、大いに意見が分かれる部分です。例えばタイガーウッズは、パターでも4度くらいのフェース開閉があるそうですし、当サイトでも紹介している桑田泉プロなどは「パッティングでもフェースをローテーションさせて打つのが正しい」とレッスンしています。
しかし初心者の人は、単に真っ直ぐ転がすだけなのにフェースを開閉させたら不正確になるのでは?という疑問を持つはずです。ラインに対して直角にテイクバックして、真っ直ぐに打ち抜く方が精度が上がると思うことでしょう。
実はこの「パットでフェースを開閉させるべきなのか?」という疑問には、物理的に明確な答えが存在します。プロでも賛否があるように、別にどちらの方法でも不正解ではないのですが、パターの形状によって開閉すべきか否かは決まるのです。
ゴルフショップのパター売り場に行けば、実に様々な形状のパターが売られています。ドライバーでもアイアンでも、上級者向けと初心者向けではヘッドの大きさが異なりますが、パターの形状は知らない人が見たら「本当に同じ種類なのか?」と驚くくらいに、多種多様です。この形状の違いで、最適なストローク方法が変わってくるのです。
昔からあるパターの形状「ピン型」「L字型」「キャッシュイン型」などは、比較的ヘッドが小さいです。こういう小型ヘッドのパターは、フェースを開閉させて打つのが基本です。といっても無理矢理腕をローテーションさせる必要は無く、パターを振り子のように動かせば、ナチュラルに円を描く「インtoイン」の軌道になり、フェースも勝手にナチュラルに開閉するのです。手で操作してフェースを開閉させるのではなく、自然に開閉するように振るのです。
一方で近年増えているのが、「マレット型」や「ネオマレット型」と呼ばれる形状で、ヘッドが明らかに巨大化していることが分かるでしょう。マレット型のパターは、ピン型やL字型と違ってフェースを真っ直ぐ引いて真っ直ぐ打ち出すのが正解です。つまり開閉はせず、フェース面は常にラインに直角に動かす訳です。
ヘッドの大きなパターは、物理用語で言う慣性モーメントが大きくなります。慣性モーメントが大きいというのは、フェースを開けば戻りにくいですが、逆に真っ直ぐ引けば真っ直ぐ押し出しやすいのです。マレット型パターは、そもそもフェースを開閉させずに真っ直ぐ打ち抜くよう、設計されたパターなのです。
・ピン型やL字型など小型ヘッドのパターはフェースが開閉する
・マレット型のような大型ヘッドのパターは開閉させずに真っ直ぐ振る
まとめると上記のようになります。大型ヘッドのパターを使っているなら、無理矢理開閉させようとせず、真っ直ぐ引いて打つのが正解です。
ではどちらの形状のパターが有利なのでしょうか?これも完璧な正解など無いのですが、初心者の人はマレット型のような大きなヘッドのパターの方が易しいと感じるはずです。理由は二つあって、まず小型ヘッドのようにフェースが開閉する事は、真っ直ぐ狙った方向に打ちたい初心者にとっては、やはり違和感を覚えやすいと言うこと。
もう一つの理由は、大型ヘッドの方がパターの芯(スイートスポット)が大きいので、ミスヒットしても距離感がずれにくいメリットがあることです。実はパターでも、芯からずれた位置で打てば、反発力が削がれて転がる距離が少し短くなります。そしてパターのような小さなスイングでも、100%芯で捉えるというのは意外に難しく、ロングパットのように少し大きく振れば、上級者でもミスヒットすることは珍しく無いのです。故に、芯の広いパターの方がミスヒットが減り、距離を合わせやすいのです。
但し大型ヘッドのパターは、技術面では優れていますが、他の面でデメリットがあります。まず値段が高いことです。ピン型やL字型などは、新品でも5千円以下という商品もありますが、マレット型のような大型パターは総じて高額で、1万5千円〜2万円位が標準価格帯です。
もう一つのデメリットは重いので持ち運びに不便なことです。大型パターはヘッドが大きい上、慣性モーメントを高めるために重量が重く設定されており、持ち運びする時には少々鬱陶しく感じるでしょう。
ちなみに当サイト管理人は、パターとウェッジだけ小型バッグに入れ、電車で行けるショートコースに練習しに行くこともあるので、日頃から小型のL字型パターを使っています。マレット型は重たいので、歩きのラウンドや電車移動など、長時間持ち歩くには適さないと感じます。大型ヘッドの方が易しいのは理解してますが、パターは所詮「慣れ」の問題だと思っています。